「今は休刊になった『トラックボーイ』という雑誌でデコトラのカッコよさに衝撃受けて、自転車を“デコチャリ”に改造して学校に通ったりしてました。車の免許を取って最初は普通車に乗ってたけど、20歳でベースのトラックを200万円で買って飾りを始めて、かれこれ300万~400万円かけてます」

 車体メーカーに勤務する兼業農家の村上哲也さん(23)=宮城県東松島市=は、「トラック野郎」シリーズを一緒に見ながら育った兄の真也さん(享年26)を東日本大震災で亡くした。

「いつかはデコトラに乗りたいと夢見ていた兄貴の遺志を受け継いで、デコトラに乗って仮設住宅にボランティアに行っています。亡くなった人は星になるって言うじゃないですか。だからトラックには『流星丸』って名前をつけました」

 哥麿会の被災地支援は、91年、長崎県の雲仙・普賢岳火砕流に始まり阪神・淡路大震災、東日本大震災、昨年の地震と脈々と続いてきた。物資運搬や炊き出しだけでなく、荷台をステージにできるデコトラを使った演歌歌手のリサイタルなどで、長期化する仮設住宅生活で疲れた人たちを支えてきた。日本赤十字中長期的ボランティア支援団体に認定され、3年前には一般社団法人格を取得した。

●「トラック野郎」復活を

 こうした活動と、初日の出にデコトラ約300台が集結するイベントを2013年、英国BBCが取材して130カ国で放送。昨年にはグッチが哥麿会のド派手なデコトラを使った広告動画を作成して話題を呼んだ。

 日本で生まれ、成熟を遂げたデコトラ文化。菅原文太が演じた主人公、星桃次郎の愛車「一番星号」も修復をほぼ終え、映画復活の環境も整った。

「3年前に亡くなった鈴木則文監督も続編を熱望していた。初日の出イベントも『トラック野郎製作委員会』として続けているし、ぜひ近いうちに実現したいですね」(田島会長)
(編集部・大平誠)

AERA 2017年3月6日号