天井を張り替え、シーリングライトをつけた。テレビモニターも2台、設置してある。味気ない福祉車両と見比べると、オシャレテイスト満載。

「従来のものに満足できない人が多かったということですよね。ダサいのはイヤ、車椅子のまま乗るにしてももっと快適に、ゴージャスにという需要があるんだと実感しました」(林さん)

●何かが生まれる可能性

 軽自動車を改造したキャンピングカー「ぷちキャン」のブースも、多くの人でにぎわっていた。軽自動車専門店カーショップアシストを営む藤原栄二さん(44)は大のアウトドア好き。家族4人でキャンプを続けるうちに、趣味が高じて自作してしまったのだという。テーブルや棚、ベッドなどを備えた車内取り付け用の「ぷちキャンTRYIIキット」が39万8千円。

「自分で設置することもできるので、地方から送ってくれと頼まれることも少なくありません。また、キットは荷物扱いで、いわゆるキャンピングカーと違って特種用途自動車にならない。8ナンバー登録も構造変更申請も不要です」

 続けて、藤原さんは「軽」の利点をこう語る。

「地方は道が狭いことが多いです。漁港の奥まで行こうとすると軽しか入れないところも少なくありません。軽トラしか走れない農道も問題なく走れる。狭小スペースで止められるというメリットも、思いのほか大きいですよ」

 新たな胎動を感じさせるニッポンのカスタマイズ車は、決して昭和などではなく、リーマン・ショックの経験を踏まえた「平成」の産物だった。

 日本で生まれた「ガラパゴス化」という言葉には、国内の閉ざされたマーケットで進化を続けるうち、デファクトスタンダードから外れてしまったという、ネガティブな意味も含まれる。

 しかし、自動車カスタマイズ市場は、作ったり改造したりする側がしっかりとマーケットの声に耳を傾けて発展を続けていた。ここから世界につながる「何か」が生まれてこないと、誰が言えるだろうか。

 そんな空気にちょっと元気をもらって、会場を後にした。(ライター・赤澤竜也)

AERA 2017年3月6日号