ひときわ人目を引く紫の「ドリフト車」を出品していたのは、奈良県の中村直樹さん(34)。

「23歳くらいのころから、国内外のドリフト車レースに出ています。限界ギリギリのバトルが楽しいですね」

 取材中もファンが話し掛けてくるほどの人気者だ。今年はレースやイベントでさらに忙しくなりそうだと語る中村さん。日本テイストのカスタムは海外でも人気だという。

「ステッカーの売れ行きも日本とは比べものにならない。日本はサーキットの利用料が高いし車離れも進んでいるけど、まだまだ負けられません」(中村さん)

●セダン限定女子チーム

 会場内は、出展者、来場者ともに男率9割以上。だが、

「カスタムを楽しむ女性は確実に増えていると思いますよ」

 と話す人がいた。イエローゴールドのアリストを出品していた上野ともみさん(26)だ。アリストは、トヨタ自動車が1990年代から2000年代にかけて販売した高級セダン。隣には、タコ焼き色の改造クラウンもある。このクラウンのオーナーも、スーツ姿の女性、上田千滉さん(25)だった。

「珍しい色にしようと思って、タコ焼きの生地の色にしました。友だちからは『この色、ヤバいな』って笑われます」

 と屈託がない。ふたりともセダン限定の女子チームでツーリングを楽しんでいる。ファミリーカー全盛の時代に、セダンにこだわる女子たち。上野さんに、

「こだわりポイントはきれいでシンプル。っていうか私のなかではこれでもシンプルなんです(笑)。車の中も見てください」

 と言われてのぞくと、外見はいかついが、確かに内装は上品だ。この車を見せて、気になる男性から引かれたりしませんか?と尋ねてみると、

「そうなっても、こっちのほうが大事です」

 と声をそろえる。改造車の世界でも「女性活躍」なのか。

 時代を映すカスタマイズは、女性の手によるものだけではない。会場で目を引いたのは、トヨタのハイエースに車椅子用のリフトを取り付けた改造福祉車両だ。中古ハイエースのカスタム販売を手掛けるFEELの林年裕さん(45)が機械メーカーとともに開発した。福祉車両を頼まれることが続き、商品化を思い立ったという。

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