来場者が群がったシルバーのヴェルファイア。手作業で模様を彫り、メタルペイントを施したという(撮影/楠本涼)
来場者が群がったシルバーのヴェルファイア。手作業で模様を彫り、メタルペイントを施したという(撮影/楠本涼)

 若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる。一方で欧米は電気と自動運転にまい進。いまやIT企業や新興勢力の参入も相次ぎ、もうバトルロイヤル状態だ。だが待ってほしい。日本には「技術」だってガラパゴスで元気な市場だってある。AERA 3月6日号「進め!電気自動車」では、そんな熱い人々にフォーカスしてみた。

【ドリフト車から福祉車両まで…改造車両の写真はこちら】

 スマホに好みのアプリを入れて自分仕様にカスタマイズ。同じように車も……は、実はいまに始まったことじゃない。日本は世界に冠たる「改造」先進国だった。

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 開場時間の9時を迎えるころには、ゲート前に10メートルを超えようかという大行列。盛況だと聞いてはいたが、これほどとは。2月10日から3日間、大阪市のインテックス大阪に22万人を超える来場者を集めた「大阪オートメッセ2017」のことだ。

「CAR&CUSTOMIZE MOTOR SHOW」のサブタイトル通り、自動車や部品のメーカー、カスタマイズするためのグッズや工具、カスタマイズされた車が一堂に集うという。

●節税にならない軽トラ

 カッコいい車に露出度の高いコンパニオン、群がるカメラ小僧というアナクロな組み合わせは、昭和を強く感じさせる。だが場内を歩くうち、人々の熱気が懐かしさに勝っていった。

 日本の誇るドメスティック規格、軽自動車ばかりが置かれたコーナーで、フロントマスクからフェンダーまで原形をとどめないほど改造された2台の軽トラックを発見。これを展示していたYa-shiさん(45)、MAIKOさん(41)夫妻に、思わず尋ねた。

「この車、公道を走ってもいいんですか?」

 いかつい風体ながら目が優しいYa-shiさんが答える。

「ちゃんと運輸支局で検査を受け直して車検も通ってる。だから公道も走れるんだよ」

 税金が安くなるということ以外に軽自動車を選択する理由はないと思っていたのだが、ふたりの軽トラは白ナンバー。改造の結果、車体の幅が軽トラの基準を超えて普通車になってしまった。なぜ、軽トラなのか?

「畑で農作業しているような何の変哲もない軽トラも、改造することでここまでカッコよくなる。そのことを表現したい」
 とにかく熱く語ってくれるYa-shiさん。これほど人を興奮させる何かがあるからこそ、モノが売れなくなった昨今の日本でも、マーケットとして成り立つのだろう。

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