中でも同社の広報担当者が最も強調したのは、カーシェアリング機能だ。所有者が車を使わない時間帯に他人に車を使ってもらうというもので、専用のアプリに登録していれば、誰でも利用が可能。例えば「午後7時まで車が使える」というデータをタッチスクリーンに入力し、画面上の「シェアリングボタン」を押すと、登録者のスマホに専用アプリの地図情報が現れ、シェア可能な車の所在地が示される。所有者や過去の利用者のコメントも同時に出てくる。

 それを見て「車を使いたい」という人がアプリの予約ボタンを押すと、車の所有者には予約者の情報が送られ、了承すれば交渉が成立。車には「シェアラブル・ロック」と呼ばれる電子ロックシステムが採用されており、これによって予約者が車のロックを解除し、運転する権限が与えられるのだという。同社は、この独自の技術革新によって、新しいカーシェアリングが可能になったと胸を張る。

 この車は年内に中国で、18年からは欧米で、ネットでの販売を計画している。ディーラーを通さずに直販することで価格を最大3割抑えることが可能としており、購入した後は自宅に直送される仕組みだ。自動車メーカーが製造した車をディーラーが売るという「製販分離」の常識を覆す新しいやり方だが、この発想は同社独自のものではなく「米EV大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に影響を受けたもの」と同社は説明している。

●米の砂漠で実験を公開

 販売価格を抑えるため、自社EVの直販を実現しようと、カーディーラー側と法廷闘争を続けてきたマスク氏は、常に新しいビジネスアイデアを生み出し、形にしてきたUX時代のフロントランナーだ。実際、リチウムイオン電池や太陽電池、固定式蓄電池の製造販売も手がけ、宇宙船の開発・打ち上げをする「スペースX社」まで立ち上げた。単なるEV生産にとどまらないマスク氏の発想そのものが「UX」だとして、資金を提供する人も少なくない。

 そのマスク氏は現在、自宅がある米ロサンゼルスの交通渋滞が耐えられないとして「地下トンネルを掘る」と宣言し、ツイッターに巨大な削岩機の画像を投稿、話題を呼んでいる。実はこの地下トンネルを使って移動するという発想は、自動車の枠を超えた未来型の「モビリティー(移動手段)」へとつながる。人々を乗せたカプセルが、各地をつなぐ加圧チューブ内を旅客機以上の高速で移動するという「ハイパーループ」構想だ。マスク氏の発想を受け、現在二つの会社が実験を繰り返し、実現を目指しているという。

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