通信大手も参入。積極的なのはソフトバンクグループだ。

「もともとエネルギーとITの新しい関係をつくる新サービスの事業化に乗り出したはずが、地域に貢献する小さなモビリティーを扱う集団になってしまった。小さなEVを使わせたら“日本最強”を目指したい」

 そう話すのは、ソフトバンクグループ子会社でITソリューション、ITアウトソーシング事業を行うPSソリューションズCPS事業本部の山口典男さん(53)。参入したのは、電気を誰がどこでどんな用途にいくら使ったか特定できる「ユビ電」を開発したことがきっかけ。使った人に使った分だけ電気料金を請求できるといった見える化の有用性を証明するには、パソコンや携帯よりも消費電力の大きいEVが最適だと判断し、事業に参入したという。

 現在は香川県の豊島で、観光客向けに電動バイクをレンタル中。奈良県明日香村でも2人乗りEVを観光客向けにレンタルするサービスを構築した。車両コストがまだ高いため、比較的多くの収益が見込める観光利用にとどめているが、将来的にはそれ以外でも事業が成立する可能性はあるとみている。

「超小型モビリティーに代表される小さな電気自動車に、田舎の高齢者が気軽に乗れて買い物に行ける──それが経済的にも社会的にも合理性を持つようになるのが、ゴールなのかなと。我々はその端っこを担おうとしているのかもしれません」(山口さん)

●ITで最適運行目指す

 ソフトバンクも新たな市場に熱い視線を送る。同社は渋滞や大気汚染など、車に関する課題の解決を目指して、新しい交通サービスをEVとITを組み合わせたパッケージにして提供する試みをフィリピン・マニラで行っているのだ。

 車両は6人乗りのEVで時速40キロ以下で走行。運行場所はマニラのイントラムロスという城壁で囲まれ、交通手段の乏しいエリアだ。バスのように乗降場所は決まっており、一定車間をとって計50台が運行中。「安心して乗れる」「便利」と地元住民も歓迎しているという。

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