「『低炭素社会を目指そう』というのがそもそもの始まりです。マイカーが多い一方で、公共交通が不便な部分があり、事業を通して地域交通のより良いあり方を考えたい」

 こう話すのは、共同運用メンバーの深谷政信さん(48)。同市にはトヨタ関連企業が多いため、世帯当たりの車所有は平均2台。そんな状況に一石を投じる取り組みだ。

 最高で時速60キロと速さは追求できないが、「ちょっとそこまで」という近距離需要の受け皿になっている。2014年12月の事業開始以来、事故もなく、安全な乗り物としての評価も定着し始めている。

 ただ、営利事業へのハードルは高い。近距離移動にお金を払う意識もほとんどないだけに、定着するかどうかまだ手探りだ。事業を通じて市民生活に何が最適か見極めるという。

 場所は変わって神奈川県相模原市内にある高校の跡地。向こうからバスが時速10キロほどでゆったりと走ってくる。車内には運転席がない。あるのは座席と走行ルートを示すモニター、乗降ボタンだけだ。仏イージーマイル社製の自動走行バス「ロボットシャトル」で、インターネット関連事業大手のDeNAが走行実験を続けている。

●通常運転は時速10キロ

 行き先に設定した場所に着くと、ドアが自動で開き、乗車後にボタンを押して扉を閉めれば自動で走り出す。降車場所に着けばまたドアが自動で開く。車体に前後はなく、方向転換も不要で設定ルートを往復できる。最高時速は40キロだが、通常運転は10キロと、まさに超低速だ。DeNAオートモーティブ事業部の隅本直輝さん(34)が、実験の狙いをこう説明してくれた。

「交通弱者の日々の交通手段をどうするか。その解決策として、このバスを提供したい。自動運転によって提供できる価値も都市部や地方からの期待感も大きい。我々はメーカーになろうとは思っていませんが、一つのモビリティーサービスとして顧客に提供する立ち位置で取り組みたいと思っています」

 走行実験を重ね、ラストワンマイルの課題解決サービスとして全国に提供する構えだ。

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