中長期的には新たな不安材料もある。国債増発に伴う米金利の上昇だ。すでにそれを織り込むかたちで、債券市場では米国債の売り物が増加。長期金利(米10年債利回り)は大統領選前の1.6%台から2.5%にまで上昇。イエレンFRB議長はトランプ氏の不満をよそに、利上げに向けたタカ派発言を残している。

 急激な金利上昇圧力は企業活動の足かせになりうるという。世界最大の資産運用会社であるブラックロックでグローバルマクロ戦略投資に従事した経験を持つ英系投資顧問会社SPRING取締役の塚口直史氏は次のように話す。

「金利上昇は企業の設備投資の意欲を低下させるうえに、消費者に対しては住宅投資の阻害要因になりえます。さらに、株安圧力にもなる。経済の好循環が続くようであれば、金利高と株高が両立するが、減税プランの縮小で株の失望売りが生じたりすると、トランプ政権にとって大きなダメージとなります」

 前出の加谷氏曰く、アメリカ国民は日本と比較にならないほど株価に敏感。

「夕方のニュース番組の第一報で株価の動向を扱うことが少なくありません。アメリカの年金基金はほぼ半分を株で運用しているほか、中間層以上は株を運用しながら老後に備えている。株価が国民の生活に直結するため、株安は政権の支持率低下にも結び付きやすいのです」

●共和党内からも反発

 その意味で、最も注目を集めるのが予算教書演説を経て、今後本格化する予算審議だ。ご存じのとおり、上下両院で過半数を握る共和党の主流派は財政支出の拡大に消極的だ。党内には「小さな政府」を理念とする強硬な財政保守主義者もいる。身内である共和党からも反発を浴びて減税策で大幅な譲歩を余儀なくされると、「早ければ2年後の中間選挙、ないしは4年でトランプノミクスはピークを迎えてシュリンクしていくことも考えられる」(片岡氏)

 大規模な財政政策でどれだけ経済を活性させることができるか? 政策が骨抜きにされるようであれば、トランプ政権の寿命は短い。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2017年2月27日号