●効果大のインフラ投資

 このようなトランプ政権の下でアメリカはどのように変わるのか? トランプ氏が掲げる政策から、今後のアメリカを占ってみよう。

「減税を柱とした大規模な財政政策に金融政策がかみ合えば、最短経路で低成長を終わらせ、目標に掲げる国内総生産(GDP)4%成長を達成する可能性もあります」

 こう話すのは三菱UFJリサーチ&コンサルティング上席主任研究員の片岡剛士氏だ。

 トランプ氏が掲げてきた財政政策は主に三つある。年間500億ドル規模の防衛支出拡大と所得税・法人税の大型減税、10年間で1兆ドルを予定しているインフラ投資だ。このうち、所得税減税は年間2500億ドル、法人税減税も同額の規模となる見込み。

 これらのなかで、最も直接的にGDPを押し上げる効果があるとされているのが、雇用創出効果も見込めるインフラ投資。乗数理論ではその投資額に対して最大で120%のGDP押し上げ効果があるとされている。年間投資額を1千億ドルとすると、米国GDPは0.5%押し上げられる計算となる。さらに、消費を呼び込む所得税減税は規模の大きさから、GDPを最大0.9%も押し上げる可能性があるという。法人税減税と防衛支出の効果を合わせると、トータルで「GDPを最大1.9%上振れさせるポテンシャルがある」(同)。2016年度の実質GDP成長率1.6%と単純に足し算すれば、これだけで3.5%。目標の4%達成は間近だ。

 日本では大規模な財政政策は、とかく「ばらまき」「効果薄」と批判されがちだが、アメリカでは別物。トランプ政権移行チームに複数のスタッフを送り込んできた保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の元上級研究員で政治アナリストの横江公美氏は「アメリカは発展途上国の側面を持つ国だから」と言うのだ。

●財政余力は十分

「道路、橋などのインフラは1960~70年代に造られたものが多く、日本とは比較にならないほど老朽化が深刻な問題となっています。だから、1月には民主党のサンダース上院議員らが先んじて10年間で1兆ドル規模のインフラ投資法案を提出している。アメリカにおけるインフラ投資は、雇用創出効果に加えて、低下する労働生産性を高める効果もあると考えられます」

 そもそも1兆ドルという規模は「決して大きな額ではない」という。経済評論家の加谷珪一氏が話す。

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