日本列島VR。全体を表示(VoxcellDesign)
日本列島VR。全体を表示(VoxcellDesign)
「日本列島VR」はVRヘッドセットとコントローラーを使って体験する。正面のディスプレーには、一部が表示されている。上空から見た風景に、方角や地名などを重ねて表示することもできる(撮影/編集部・長倉克枝)
「日本列島VR」はVRヘッドセットとコントローラーを使って体験する。正面のディスプレーには、一部が表示されている。上空から見た風景に、方角や地名などを重ねて表示することもできる(撮影/編集部・長倉克枝)
NTTが開発を進める「ぶるなび」を搭載したスマホ(左)を手に持つと、一定の方向に引っ張っていってくれる(撮影/編集部・長倉克枝)
NTTが開発を進める「ぶるなび」を搭載したスマホ(左)を手に持つと、一定の方向に引っ張っていってくれる(撮影/編集部・長倉克枝)
検索回数が多い場所を示したナビタイムのヒートマップ(写真:ナビタイムジャパン)
検索回数が多い場所を示したナビタイムのヒートマップ(写真:ナビタイムジャパン)
スマホアプリに休憩時間、渋滞状況、到着時間といった複数の未来のパターンを表示し、ドライバーがそこから自分の行動を選べるカーナビ(写真:東京大学大学院廣瀬・谷川・鳴海研究室)
スマホアプリに休憩時間、渋滞状況、到着時間といった複数の未来のパターンを表示し、ドライバーがそこから自分の行動を選べるカーナビ(写真:東京大学大学院廣瀬・谷川・鳴海研究室)

 トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。VR(バーチャルリアリティー)やスマホアプリで地図の世界もどんどん進化している。ブラタモリなど街歩きブームの極意もルポする。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。

 VRや情報技術の活用で、地図そのものが大きな変わり目にある。地図の世界に入り込む体験をできるようになったり、地図を見なくても目的地まで引っ張っていってくれたり。そんな世界がすぐそこに。

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 VRのヘッドセットをかぶって、コントローラーを両手で持つ。眼下には、関東平野から東京湾の風景が広がる。あたかも、飛行機の窓から地上を見ているようだ。と、まず思ったが、360度ぐるりと首を回してみると、全景を見渡せる。自分ひとりが高度6千メートルの空中に浮いて、日本列島を見下ろしているかのような気分になった。

 手元のコントローラーを使って西へ進むと、眼下には富士山が見えてきた。オートパイロットモードにすると、コントローラーを操作しなくても空を飛んでいるかのように、自動的に移動する。さらにコントローラーを使って時間帯を夕暮れ時にすると、西のほうに夕日が沈み、空全体があかがね色になっていった──。

 これはボクセルデザイン代表の脇塚啓さんが開発した「日本列島VR」だ。かぶると360度視界のVR空間を楽しめるVRヘッドセットと、VR空間内であたかも自分の手のように使いこなせるコントローラーを使って体験する。

 脇塚さんは、2015年から「日本列島VR」の制作を開始した。昨年秋に体験のデモ動画をウェブで公開すると、日本列島の上空から風景を楽しめるとして、ツイッターなどで一気に広まり話題となった。

●日本列島を上空から

 まるで実際に日本列島上空を旅しているかのようにリアルな光景が楽しめるが、実はこの日本列島は、空撮や人工衛星などによる写真画像ではない。すべて、数値データをもとにゼロから脇塚さんが作成した、3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)の画像だ。CG画像をリアルタイムで合成しているため、日本列島の上空を移動しているかのような体験ができるのだ。

 まるで現実かと見間違えるような風景だが、一体、どのように作られたのだろうか? 脇塚さんに制作過程を教えてもらった。

 まず国土地理院が公開している日本列島の地形の標高データなどをもとに、独自開発したプログラムでモノクロの地形画像に変換する。

 さらに、独自に開発した「シェーダー」と呼ぶ陰影を付けるためのプログラムを使い、その上に色や質感を付けていく。最後にゲームエンジン「ユニティ」を使い地形全体を表示し、さらに太陽光や大気の効果を付け加えていく。

 もともとパイロットの訓練用などのフライトシミュレーター向けCGを手掛けていた脇塚さん。「リアルタイムで思いのままに操作して、きれいな見た目を楽しめるものを作りたい」と、日本列島VRの制作に着手した。

 写真ではなくリアルタイム3DCGを使うメリットは、時間や季節に応じて、日本列島の変化を自在に楽しめることだ。

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