横浜ゴムクルマを支え、支えられ横浜ゴム タイヤ企画部 事業開発グループ グループリーダー 佐藤英俊 (42)撮影/伊ケ崎忍
横浜ゴム
クルマを支え、支えられ

横浜ゴム タイヤ企画部 事業開発グループ グループリーダー 佐藤英俊 (42)
撮影/伊ケ崎忍

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回は横浜ゴムの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■横浜ゴム タイヤ企画部 事業開発グループ グループリーダー 佐藤英俊(42)

 社内では典型的な「いじられキャラ」。親しみを込め、「ヒデちゃん」と呼ばれ、周りの空気を和らげる。横浜ゴムの佐藤英俊は、そんな存在だ。

 一方、業務内容は対照的に、シビアそのもの。世界8位のシェアを誇るタイヤ事業の中期計画、および国外工場の新設・拡張プランの立案を任されている。投資額や回収期間を計算、事業可能性を検討し、経営陣に提案する。同社の主力商品を扱うだけに、関連する部門が多く、扱う情報量も膨大なら、動かす金額も大きい。その分のプレッシャーが佐藤と部下8人にのしかかる。

 関係する各部門間で、意見の食い違いが起きることは、やはり避けられない。だから、互いの信頼感がベースに必要。信頼を得るコツは、「上司にも部下にも、自分を装わず本音で接すること」だと思う。

「ピリピリした状況でおのおの不満を残したままプロジェクトを強引に動かしても、しこりが残り、結果としてうまく進まない。『ヒデが言うなら……』と協力してもらえる人を一人ずつ地道に増やしていくことが大切だと思い、若い人たちにもそう伝えています」
 1998年、横浜国立大学経済学部を卒業後、入社。販売促進、製品企画などを経て、2013年から現在の業務に携わっている。

 工場を運営するアメリカ、中国、フィリピン、タイなど計7カ国の生産子会社の事業運営もフォローする。各国の経済状況や販売状況の変化、競合他社の進出など、国内に負けず劣らず調整は大変だ。計画の見直しを迫られることになれば「計画を立てるのと同じくらい骨が折れる」。

 そんなプレッシャーから解放されるときが、「休日に子どもを乗せてのドライブ」と話すほど、大のクルマ好きだ。山越え谷越えクルマが安定して走るように、新設した工場が成長していくさまを見たい、という思いが、仕事上での大きな駆動力になっている。
(文中敬称略)

(ライター・安楽由紀子)

AERA 2016年11月14日号