黒い欲望を描く現代の魯迅 (2/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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黒い欲望を描く現代の魯迅

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泉京鹿AERA
「こんな構図、よく思いつくなあ。さすがはプロだね。どんな写真になるのか楽しみだ」。カメラマンの動きや指示に一つ一つ感心しつつ、緊張気味にレンズを見つめる。同郷の親友・田原氏が教鞭を執る東京都千代田区の城西国際大学で(撮影・伊ケ崎忍)

「こんな構図、よく思いつくなあ。さすがはプロだね。どんな写真になるのか楽しみだ」。カメラマンの動きや指示に一つ一つ感心しつつ、緊張気味にレンズを見つめる。同郷の親友・田原氏が教鞭を執る東京都千代田区の城西国際大学で(撮影・伊ケ崎忍)

●農民の粘り強さ

 中でも『愉楽』は一昨年、第5回ツイッター文学賞海外編第1位に選ばれ、増刷を重ねる。賞の発起人で自らもこの作品に一票を投じたという書評家の豊崎由美は、書店のイベントで閻と対談した際、『愉楽』と最近刊行された初期の作品『年月日』を取り上げ、「決して諦めない登場人物」という共通点を、閻の作品の魅力の一つと指摘している。

 また、『愉楽』をはじめ、これまで多くの閻の作品を翻訳してきた名古屋経済大学教授の谷川毅は『人民に奉仕する』のあとがきで次のように記している。

「彼の作品に出てくる登場人物は、お金であれ、ものであれ、権力であれ、愛情であれ、ただひたすらそれに向かって飽きることなく邁進する人ばかり。閻氏の体の中にある、農民の粘り強さ、忍耐強さが、そのまま作品の中に反映されている」
「飽くなき思い」を胸に「諦めない」閻の描く人々に、読者は作家自身の農民出身ゆえの「強さ」を感じるのではないか。
 その強さが反映されるのは、小説の中だけではない。現実の中国社会において多くの著名人が口をつぐんでしまう体制への不満も、ためらうことなく自分の言葉で表明し、常に物議を醸してきた。

 中でも日中関係において日本側の事情も汲み取り、中国側の行動を批判する発言は、中国では集中砲火を浴びること必至のタブーであるが、閻はそこでもためらうことはなかった。

「ひとつの国家、ひとつの民族の、文化、文学が冷遇され消滅するとき、(国の)面積などなんの意味があるというのか?」

●村上春樹への返信

 村上春樹が12年9月に朝日新聞に寄せた東アジアの領土問題をめぐるエッセーへの返信として本誌12年10月15日号に寄稿した「ひとつの文学が冷遇されるとき、国の面積など何の意味があるのか」では、尖閣諸島問題で悪化した日中関係を憂い、文学や民間交流までもが巻き込まれる領土権争いを批判し、「文化と文学は人類存在のもっとも深い部分の根であり、中でも、中日両国及び東アジアの人々が互いに愛しあうための重要な血管なのである」と呼びかけた。


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