トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。VR(バーチャルリアリティー)やスマホアプリで地図の世界もどんどん進化している。ブラタモリなど街歩きブームの極意もルポする。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。最近、密かに人気が高まっている街歩きだが、ある方法を用いることで、普段の街歩きが何倍も楽しくなるという。果たして、その方法とは――。
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東京メトロ日比谷線、小伝馬町駅からすぐの十思公園(東京都中央区)。ベンチに腰掛け、スマホに夢中なサラリーマンがいた。地図に目を落とすと、「囚獄」とある。この場所が、最大1千人近くの罪人が拘置されていた江戸最大の牢屋敷の一部だったとは思うまい。
記者が見ていたのは、幕末の江戸の人々に使われていた切絵図という区分地図だ。『古地図で歩く江戸・東京』を監修した東京大学史料編纂(へんさん)所教授の山本博文さんは、
「江戸は諸藩からのぼってくる人も多く、歩き回るには地図が必要。地域ごとに詳細な地図で表した切絵図は、10センチ×15センチくらいのサイズで折りたたんで使われていました」
山本さんは散歩に行く際、この切絵図を持参する。
「江戸の町割りが現代に残されていたり、地名の由来に気づいたりすることもあります」
例えば、切絵図を見ると現在の東京メトロ溜池山王駅の付近に大きなため池が。切絵図の一部はネット(国立国会図書館デジタルコレクション)から見ることもできる。ただの街歩きも、こうした地図があれば何十倍も面白い。
埼玉大学教育学部の谷謙二准教授(地理学)が開発した「今昔マップ」は、明治以降の全国11地域の地図を現在の地図と左右に並べて見られる優れもの。スマホで操作でき、散歩のお供にはもってこい。谷さんは言う。
「現在の東京の姿と見比べることで、街がどのように発展してきたかもわかります」