●姿はないが真実がある

ロ:実は次の映画は中東のある国で撮るんだよ。

島:えっ、どこですか?

ロ:それはまだ秘密です。

島:楽しみですね。影響を受けた映画監督はどんな方ですか?

ロ:ドキュメンタリー映画はあまり観てないんですが(笑)、小津(安二郎)が好きです。彼のカメラワークと独特の間ですね。あとは溝口(健二)、ルイス・ブニュエル、ピエトロ・ジェルミです。でもこの1年はいろんな国を映画のプロモーションで巡ったので1、2カ月はゆっくり休みたいです。

島:緻密に構成される監督ですが、フィクションを撮らないかとは言われませんか?

ロ:この映画も、難民だけを描いたわけではなく、光と影、死と生、変化と成長、様々なテーマがある。現実の人々を撮り、再構成することで力強い物語に変える作業に夢中なのです。ありふれた日常が日常でなくなるような、超現実的、抽象的で、不確かなもの。イタロ・カルヴィーノが、はっとして振り向いた時、もうその姿はない。だが、そこに何らかの真実がある、というようなことを書いているけど、余韻というのか、そんな映像を目指しているんです。

島:今日は貴重なお話をありがとうございました。またお会いしましょう。

(構成/ノンフィクション作家・島村菜津)

AERA 2017年2月20日号