ソーシャルメディアの書き込みを分析する調査会社によると、トランプ氏の暗殺を呼びかけるツイートが大統領就任後の約2週間で1万2千件を超えた。シークレットサービスの捜査対象になっているケースもあるというが、米大手メディアはほとんど報じない。トランプ支持のデモも行われているのに、クローズアップされるのは反トランプデモばかりだ。

 これらを偏向報道とみる人は、トランプ支持者を除いても少なくない。支持率が示しているのは、「トランプ離れ」よりも「反トランプ離れ」が広がり始めているという現状だ。

 友人は言う。

「感情的になっても意味がない。『三権分立』があるじゃないか。議会や司法によるチェック・アンド・バランス(権力の抑制と均衡)をトランプ大統領も受ける。暴言を吐いても逃げられない。これこそが大統領を縛る米国のシステムなんだよ」

●民主的にやめさせよう

 裁判所による大統領令の差し止め判断がまさにこれだ。さらに大統領を罷免するための弾劾裁判を実施する力も議会と司法に与えられている。

 共和党支配の議会でチェック機能は働くのか。日本総合研究所の寺島実郎会長は強調する。

「大統領選は実質的には直接民主主義だが、それに対して議会制民主主義がある。大統領令発動で揺さぶるトランプ氏に対し、司法と議会がどう対応するのか、まさに真価が試される」

 米国のみならず、欧州でも極右政治家の台頭が見られる今だからこそ、「世界は直接民主主義と議会制民主主義のせめぎ合いにある」と寺島氏。

「職業政治家がレーゾンデートル(存在意義)をかけて、国民の単なる代議者としてだけではなく、オピニオンリーダーとして語り出さなければいけない。それが非常に注目される」

 もちろん国民にも有効な手段はある。議会が機能を果たしていないと判断すれば、来年の中間選挙で議員に審判を下せばいい。それ以上に2020年の大統領選では、トランプ氏に直接審判を下せるのだ。民主的に選ばれた大統領だからこそ、やめさせる手段も民主的でなければならない。(編集部・山本大輔)

AERA 2017年2月20日号