地図を読み解くことで、鉄道路線の新たな姿が見えてくる (※写真はイメージ)
地図を読み解くことで、鉄道路線の新たな姿が見えてくる (※写真はイメージ)

 トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。VR(バーチャルリアリティー)やスマホアプリで地図どんどん進化する世界や、ブラタモリなど街歩きブームの極意もルポしている。路線図アプリの決定版「路線図」を紹介する。

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 地図と鉄道を愛するファンの必携書『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)。鉄道路線とその駅を、廃止されたものも含めすべて地図にプロット。国内を12エリアに分けて12冊刊行され、累計160万部超のヒットとなった。

「時刻表の巻頭にある鉄道地図は縮尺や形がゆがんでいる。どれくらいゆがんでいるのかずっと知りたかった」

 企画した新潮社の田中比呂之(ひろし)さん(59)は、そう語る。特に廃止路線の駅名を正確に調べるのに苦労し、スタッフが連日国立公文書館に通って官報を調べ、データを書き写して作り上げた。特に地方は、失われた鉄道路線の多さが一目でわかる。

「首都圏でいえば、東急多摩川線と池上線がかなり近接していること、京葉線越中島駅が都営大江戸線門前仲町駅と月島駅の中間あたりにあることなどに気づきました」(田中さん)

 このシリーズを監修した地図研究家の今尾恵介さん(58)は、この地図から見えてくる鉄道のカーブに注目する。

「基本的に直線が望ましい鉄道路線が曲がるのには理由があり、それを考えると地図を読むのが楽しくなります」

 地質の悪い区間でのトンネル工事を避けてカーブしたJR中央線の岡谷-辰野-塩尻間、通称「大八回り」や、敷設当時の地元政治家の思惑で大きく路線が曲がったJR大船渡線などさまざまなケースがある。

 西武鉄道国分寺線、新宿線の国分寺-所沢-本川越間も直線ではなく狭山市のほうに大きくカーブしている。西武鉄道は「文献などによれば入間川駅(現狭山市駅)周辺が人や商品の集散地であったためではないか」と説明するが、今尾さんは、もともとこの路線を造った「川越鉄道」の発起人が狭山市に多く住んでいたからだとみる。路線の形は、そこに住む人々の歴史も映し出す。(編集部・福井洋平)

AERA 2017年2月20日号

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福井洋平

福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。

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