結果として、目の前にある一番カネになりそうな事業から売りとばしてしまったり、他社から見れば有望な新規事業をさっさと閉鎖してしまったりする。東芝の例でいうと、メディカルは既に売り、ドル箱の半導体部門もどうやら切り売りするようですね。

 こういう状況で売りとばせば足元を見られて当然。「売却して収益源にする」という判断が適切なら、何年も前にされるべきでした。部門の売却はその事業が大成功しているときにこそなされるべきで、じり貧になってからでは高く売れるはずもない。まさに経営の判断ミスなのです。

 古い話では、アイワを買収したソニーがカネになっていない開発部門をすべて閉鎖してしまったところ、技術者ごとアップルに行ってしまい、結局は彼らがiPhoneを世に出した話は有名です。

 つまり、その会社が駄目になったとき「これから本当に必要なビジネス」をいままでやってきた人が判断するのはとても難しい。経緯も知っているし、情も入るでしょう。日本航空の再建しかり、アメリカで倒産したセブンーイレブンの再生しかり。本気で再生するなら、しがらみのない人間がやらなくては。その会社、さらには業界の常識を疑うところから始めなければ、企業再生など不可能なのです。

AERA 2017年2月20日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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