全米をトランプ支持の赤で染めた通常の地図が示すのは、州よりも一つ下の行政区分の郡単位で集計された投票結果だ。開票日当日、CNNやABCなど米テレビの報道特番で繰り返し放映されたのがこれだ。

 特に内陸部を中心に赤の色合いが濃い。トランプ氏が多くの郡で勝利したのは事実だが、人口が少ない郡が圧倒的に多いため、得票数自体は比較的少ないというのが隠された事実だ。

 逆にクリントン氏への支持は、沿岸部を中心にまだら模様だったように見えるが、その多くが大票田である人口密集地であるため、得票数は非常に多くなった。それがよく分かるのが、人口比率を掛け合わせたカルトグラム。人口の多い沿岸部の青が大きく隆起し、人口の少ない内陸部に赤を押し込む形で全米を包んでいる。クリントン氏が一般投票で有利だったことと、全米の有権者が大きく二分されていたことも一目で理解できる。

 それでもトランプ氏が大統領になった選挙制度は矛盾していないか。単なる分析データとしてではなく、見る人に考えさせる教材としても優れたカルトグラムとなっている。(編集部・山本大輔)

AERA 2017年2月20日号