●週10時間も多く家事

 85年、男女雇用機会均等法が誕生し、共働き夫婦の割合が過半数となる90年代を経て、今や「専業主婦」家庭は一般的なものではなくなった。にもかかわらず日本では「男は外、女は家」という役割分担思想が根強く残る。それは特に、自分たちの親が専業主婦だった世代に色濃い。

 NHKの「国民生活時間調査」(15年)によると、未婚男性の平均家事時間(平日)は33分だが、「既婚・子どもなし」になると26分と家事時間が減り、「既婚・子どもあり」で47分とわずかに増える。一方、女性は対照的だ。未婚女性の96分に対し「既婚・子どもなし」で253分、「既婚・子どもあり」では393分と飛躍的に増える。

 本来家事時間が減っていくべき「働く女性」の家事時間は四半世紀を経てなお横ばい状態だ。前出の筒井教授は著書『結婚と家族のこれから』で、12年のデータを使い共働き夫婦の週当たり家事時間の差を国際的に比べた。ほぼ同じ時間働き、同じだけ稼いでいる夫婦のデータを集めて比較したところ、日本は妻が夫に比べて週10時間も多く家事をしている。

「言い訳のできないデータです」(筒井教授)

 家事への男性の意識は低い。だが、見逃せないのは、女性側の「家事をしなければ」という強迫観念にも似た思いが状況をさらに固定化させているかもしれないという事実だ。新潟国際情報大学の安藤潤准教授(経済学)は「消費生活に関するパネルデータ」(家計経済研究所)の00~08年のデータをもとに、共にフルタイムで働く夫婦の家事労働行動を分析した。すると、家計全体に占める妻の所得の割合が約50%まで増えるにつれて妻の家事労働時間は減るが、50%を超えると一転して家事労働時間を増やす傾向に転じることがわかったという。

●経済学の「傍流」扱い

 もう一つの研究では、女性が共稼ぎになった場合約8割の女性が、男性のほうの稼ぎが少なくても男性にはなるべく家事を分担させない意識があることもわかった。安藤准教授は「これは日本の女性の特色といえるかもしれない」と分析する。
 専業主婦が一般的な時代に肥大して「メタボ」化した家事が、共働き時代になっても女性ひとりにだけ求められる──さまざまなデータがそんな現状を示している。品田准教授は著書で「子どもが増えると家事負担が増えるため、少子化が進んだ」とも分析した。

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