アレクサの機能をシンプルな筒型デバイスに閉じ込めたのが「Amazon Echo(アマゾン エコー)」だ。寝室、リビング、玄関など部屋ごとに置いている人も多いそうだが、最も利用率が高いのがキッチンだという。食材の注文はもちろん、タイマーをセットしたり、レシピを読み上げてもらったり、手がふさがりがちな料理中もアシストしてくれる。調査によれば、最近は女性の購入者が増えており、IT機器に不慣れな50代以上にも支持されている。もはや音声アシスタント非対応家電=アマゾン非対応家電は売れなくなるとさえ言われている。

 エコーは日本でも年内に発売されると噂される。しかし前出の成毛さんは、iPhoneのSiriのような音声アシスタント機能が日常になじんでいない日本で普及するのか疑問視する。

 そもそも日本の家電は海外のそれとは異なる発展の仕方をしてきた。アマゾンダッシュボタン担当ディレクターのダニエル・ラウシュさんは、開発の目的を「顧客の手間や時間を省くこと」だと言い切る。確かにダッシュボタンもアレクサを搭載した家電もすべて“家事からの解放”、つまり時間の短縮や効率化を目指しているように見える。

 一方、日本で愛される家電は“高クオリティー”に仕上げてくれるものだ。冷蔵庫に求めるのは音声認識機能なんかじゃなく、鮮度が落ちない野菜室や、解凍せずに食材を切れる冷凍室なのだ。炊飯器だって、コメが自動発注されるものより、土鍋でふっくら炊いたような仕上がりに惹かれるし、何より備蓄をデータで管理されるより、自分でやりくりしたいという人が多い。家電で経済発展を遂げてきた日本から、ルンバが生まれなかった一因には、こうした背景もあるだろう。

●「手放せない」日本人

「日本の消費者はかなり特徴的」

 米国在住の投資家でIoTに詳しいスクラムベンチャーズ代表の宮田拓弥さんが分析するように、欧米と日本には、こうした家事文化の違いがある。

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