かくいう私も中学から大学まで中堅の私学で学びました。付属上がりでいいことが一つあります。大学受験の偏差値コンプレックスと無縁なのです。どこも受けていなければ、どこにも落ちたことがないわけですから、つまりは負け知らず。自分の出た大学の偏差値もよく知らず、もしバカにされていても気がつかないのですから、実におめでたいですね。でもこれは見方によっては、偏差値の呪いから自由であるということでもあるので、そういう意味では、付属校はおすすめです。

 この仕事を20年あまりしてきて、政財界で名を成した方、アカデミズムの世界で活躍している方、いろんな人にお話を伺う機会がありますが、ひとつ確かなことがあります。学歴から自由になれない人と、得たうえで手放せる人がいるということです。学びを極めたうえでノーブランドの心持ちで生きていけるのが、最強の知性かもしれません。

 米国のミシェル・オバマ前大統領夫人が若者たちに「学ぶことはあなたを自由にする」と伝え続けたように、親が子どもにしてやれることは、たとえ転んでも、学び続けるあなたは尊い、とたたえることでしょう。頑張った全ての小さな受験生に、心からの拍手を。

AERA 2017年2月6日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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