アマゾンCEOのジェフ・ベゾス(53)が、幼い頃に祖父に言われた言葉をそのまま引用したり、映画監督スティーブン・スピルバーグ(70)が、「スター・ウォーズ」や自らの代表作である「インディ・ジョーンズ」のエピソードに即して語っているのも「記憶に残るストーリー」と言えるだろう。
●力強い3連打で締める
三つ目の法則は「魔法の数字『3』と『道しるべ』を意識すること」。
これは日本語でも言えることだが、「3」は、良いスピーチに共通する魔法の数字だ。
「同じ構成の文章、同じようなリズムの単語を三つ繰り返す。これは、何千年も前から使われてきた古典的テクニックです。なぜか人は、三つ並んでいると納得しちゃう」(パックン)
前出の演説でオバマ前大統領は、If構文を3回繰り返し、その段落の最後は「隠れず、飛び込んで、その場所でがんばって」という力強い3連打で締めている。
原賀さんが最近、大学の講義で、良いプレゼンのお手本として取り上げることが多いという社会活動家、アンドリュー・ユーンのスピーチも、古代ギリシャの学者アルキメデスに倣って、貧困問題と闘うための「三つのテコ」で全体を構成している。
●聴衆を迷子にしない
さらに原賀さんは、彼が多用した「道しるべ」的フレーズに注目した。抜粋した部分にはそのフレーズはないが、長いスピーチの場合、
「これから農業の最も基本的な3要素について説明します(let me walk you through the most basic factors in farming)」
「では、これまでの農業の話から普遍化してまとめていきます(I’m going to wrap up by generalizing beyond just farming)」
などと、これから何について話すのかを明示するフレーズを挟むのがコツだという。
聞き手は、全体のスピーチの中で自分はいま、どういう位置付けの部分を聞いているのかが明確になるので、迷子になることなく最後まで話についてきてくれる。
例に挙げたスピーチはいずれも、日本人が聞き取りやすいものばかりだ。聞けば、あなたの心もきっと動く。
※AERA 2017年2月6日号