アルコール依存症になる人もいれば、ならない人もいる。この差はいったいどこからくるのか──。(※イメージ)
アルコール依存症になる人もいれば、ならない人もいる。この差はいったいどこからくるのか──。(※イメージ)

 アルコール依存、薬物依存などの依存症は、生活習慣などではなく、病気だ。個人の意志や心がけなどで対応できるものではなく、治療が必要なもの。近年、医療現場ではさまざまな試みが行われている。AERA 2017年1月30日号では、依存症治療の最前線を大特集。

 アルコール依存症になる要因のうち、半分は、日常的に大量に飲酒するといった生活習慣などの環境要因が占めるといわれている。ところが、習慣的に大量に飲酒していても、アルコール依存症になる人もいれば、ならない人もいる。この差はいったいどこからくるのか──。

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 山梨大学大学院の石黒浩毅医師は、アルコール依存症と遺伝子の関係についての研究を行っている。アルコール依存では、遺伝による体質的な要因が、環境要因以外のもう半分を占めると考えられているからだ。

 石黒医師によると、アルコールを摂取すると、脳神経の興奮系と抑制系のバランスが変化する。習慣的に飲酒すればこのバランスが崩れ、脳の中枢神経ネットワークがそれを補正しようと、次の飲酒を求める「依存脳」ができあがるという。

「その際、神経と神経の接着をガイドする遺伝子の働きが阻害されているマウスは、アルコールを与えても依存症になりにくいことがわかっています。この研究を進めれば、なぜ飲酒したくなるかだけではなく、依存症になりやすい性格なども解明できるのでは」(同)

 また、アルコール依存症は、ストレスとの関係性も深く、うつ病やストレス障害とも合併しやすい。ストレスへの弱さに働く、共通する遺伝子があると考えているという。

「依存を引き起こす脳のメカニズムと様々な遺伝子の働きが解明されれば、依存症の予防と治療にも役立ちます。アルコール依存症患者にとって大きな問題である自殺の解決にも、寄与できるはずです」(同)

(編集部・澤志保)

AERA 2017年1月30日号