米メディアには「ファクト・チェック」という監視ツールが存在する。(※イメージ)
米メディアには「ファクト・チェック」という監視ツールが存在する。(※イメージ)

 思想家・武道家の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、哲学的視点からアプローチします。

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 米メディアには「ファクト・チェック」という監視ツールが存在する。大統領選挙のときに注目されたが、立候補者の発言に虚偽や誇張がないかを査定し、有権者の判断材料として提供するのである。「ワシントン・ポスト」の専用サイト「ファクト・チェッカー」は政治家の発言の虚偽や誇張を5段階で評価している。単位は「ピノキオ」。学校をさぼってサーカス団にとらわれたピノキオが、「学校はどうしたの?」と問われたときに、事実をごまかそうとして次々嘘を重ねるたびに段階的に鼻が伸びる有名な場面から採られたものである。

「ファクト・チェッカー」の評定基準では「0ピノキオ」が「事実」、「1ピノキオ」が「一部に事実誤認、断片的引用」、「2ピノキオ」が「重大な事実欠落や誇張」、「3ピノキオ」が「深刻な事実誤認、明白な矛盾」、「4ピノキオ」が「大嘘」。

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内田樹

内田樹

内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

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