トランプ氏にも批判の対象にならない人たちがいる。絶対の自信と信頼を寄せる自分自身と、彼の一族がそうだ。

 大統領当選後初となった1月11日の記者会見。トランプ氏は大統領職とビジネスとの間で利益相反が生じることを避けるため、長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏と次男エリック氏らに全てのビジネスの経営権を譲ると表明した。政治に一切関与できない立場となった2人に代わり、ホワイトハウスで父親を支えるのは長女イバンカ氏。トランプ氏が「唯一信頼できる」とする家族の中でも最も信頼を寄せる存在で、ホワイトハウス上級顧問となった夫のジャレッド・クシュナー氏とともに、昨年11月の安倍晋三首相との非公式会談に同席した。当面、ニューヨークにとどまる大統領夫人のメラニア氏に代わり、事実上のファーストレディーの役割を果たすとみられる。

●長女と娘婿に厚い信頼

 選挙参謀として活躍し、トランプ氏の選挙演説も書いたというクシュナー氏は熱心なユダヤ教徒で知られ、結婚を機にイバンカ氏もユダヤ教に改宗。政権ではイスラエルとの関係修復にあたると見られる。トランプ氏が懇意にしていた不動産開発会社創業者チャールズ・クシュナー氏の長男でもあり、単なる娘婿以上の信頼関係がある。

 ともに81年生まれの30代で容姿端麗、実績ある実業家のイバンカ夫妻は人気も高い。ホワイトハウスの要職に大統領の親族が就くことを禁じる「反縁故者法」があるのに、無給であれば抵触しないという苦しい法解釈を駆使してまでもそばにおいておきたい──。トランプ氏にとって2人の存在は大きい。それだけにトランプ政権の行方を左右するキーパーソンとしても注目されている。

「特にイバンカ氏は、あの父親の娘とは思えないほど立ち居振る舞いに嫌みがない。政治的な発言もなるべく控えている」
 と外務省幹部。

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