一事が万事、この調子で、まったくぶれない。「反トランプ」と知れば、過去に評価した人物でも攻撃の対象に切り替わる。1月8日のゴールデングローブ賞の受賞演説で、「軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を招く」などとトランプ氏に警鐘を鳴らした米女優メリル・ストリープ氏について、トランプ氏は2015年の米雑誌のインタビューで「非常にすばらしい。とても優れた人間だ」と絶賛していた。それが一転、受賞演説の後のツイッターでは「ハリウッドで最も過大評価されている女優の一人」と酷評。トランプ氏の世界には、味方と敵しか存在していない。

 悪い印象を一度抱くと簡単には変わらない。トランプ氏の対日観は、日米貿易摩擦が問題となった1980年代で時計の針が止まったまま。同盟国としての友好関係をもってしても、なかなか改まらないのがいい例だ。

●側近はスネ夫ばかり

 感情に正直で、単純かつ分かりやすいトランプ氏だけに、粗野で幼稚な言動は本性を映し出す鏡そのもの。米国民が抱く大統領のあるべき姿とのギャップを広げ、「おもしろい」と思う人よりも「けしからん」と思う人を激しく揺さぶる。就任式への出席拒否や反トランプデモといった具体的な行動が次々に生まれ、分断は深まる一方だ。

 大統領選の勝利演説で「米国民すべての大統領になる」と宣言し、「大統領になったら変わるかもしれない」と期待されたものの、現実は違うことに世界は改めて気づかされた。変わるのはトランプ氏ではなく世界だという基本的な考え方が、日々の言動から発信されていく。

「やっかいな人だ」と、日本政府関係者。「ただ、独裁者の素質はない。人を引きつけるカリスマ性が皆無だから、その点は安心できる」とも話した。「要するにガキ大将のジャイアンなんですよ。そして側近は言いなりで目立ちたがり屋のスネ夫ばかり。対日観も含め、誰かが教育しないといけないです」

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