「そのほかにも、浮気性の夫をかばい続けた姑に不満を募らせていたケース、借金を抱えてたびたび実家に無心していた義弟の存在を嫌気したケースなどがありましたが、いずれも小さな不満の蓄積が姻族との関係を断ち切りたいと考える原因になっていました」(高草木氏)

 なぜ、このように姻族関係終了届を出す人が増えているのか? 前出の鳴海弁護士が話す。

「一つには高齢化に伴い、介護の負担の大きさに対して不安を抱える家庭が増えたこと。さらに、昔のように2世帯同居が当たり前ではなくなったこと。結婚後は夫と2人で暮らすことのほうが当たり前になったため、義父母との同居や近しい距離で生活することに息苦しさを覚える人が増えたのでは」

 実は、関係がスッパリ切れない場合もある。相続問題に詳しい東京国際司法書士事務所の鈴木敏弘・代表司法書士が話す。
「相続対策で、奥さんと義父母が養子縁組を結んだケースです。相続の際、実子1人につき600万円の控除が受けられるからです。この場合、養親と養子の合意がなければ養子離縁届を出せず、関係を切るのは難しい」

 それ以前に、姻族関係終了届を出しても姻族に通知がいかないため、関係を断ち切ったことを打ち明けられず、頼られるがまま関係を継続する人も。

 いずれにせよ、姻族との関係を切りたいという思いは、どの夫婦にも生じうる感情だ。そのきっかけは、“漠然とした不満”なのだから。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2017年1月23日号