そんなSさんも、夫が闘病生活に入ってからは不満を押し殺して生活を続けたという。家事をこなし、仕事に励み、夫を見舞う毎日。しかし、夫が末期がんを患い、先が長くないことがわかると、たまった不満はせきを切ったように溢れ出した。

「同じ境遇の方が書いている“闘病ブログ”をチェックしているときに、ふと『義母との関係の切り方』をネットで検索している自分がいた」

 その気持ちは、亡き夫の葬儀を経て確たるものとなった。

「相続のこともあるので、葬儀に前妻とお子さんたちを呼んだのです。そうしたら、義母と義妹が前妻を囲んで食事を取っていた。私と子ども2人は別のテーブル。義母と義妹の楽しそうな話し声が聞こえてきて、『私の居場所はここにない』とハッキリわかりました」

●漠然とした不満が原因

 当然、葬儀を終えても、義母との関係が改善することはなかった。それどころか、地方に嫁いでいた義妹がたびたび自宅を訪問。夫の遺品を整理していると、「(遺品は)Sさんだけのものじゃないんだから、私にも確認してください」と口を挟んできたという。夫には再婚以前からコレクションしていたものが数多くあったのだ。結局、Sさんはごくわずかな遺品と遺骨をもらって家を出る決心をする。同時に、義母と義妹との関係を断ち切ることを決断した。

「家を出るだけでは、親戚から『比較的近いんだから面倒を見てあげて』と言われる可能性があった。義母が倒れたら介護を求められる可能性もあった。それだけは絶対に嫌。だから、完全に縁を切ろうと思ったのです」

 Sさんは誰にも相談することなく役所へ向かった。すでに下調べを済ませていた。何の下調べか? 「姻族関係終了届」だ。

「姻族」とは配偶者の血族を意味する。この場合は夫の母親、妹らを指す。その終了届は、配偶者の死後、法的に姻族との関係を断ち切るためのもの。そのため、「死別離婚」などとも言われるが、Sさんは「夫への愛に変わりはない」とその別称に不満を漏らす。

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