次期大統領に決まったトランプ氏が住むニューヨークのトランプタワーの前は重装備の警察官が立つ。物々しいイメージは政権に就いた後も続くのか (c)朝日新聞社
次期大統領に決まったトランプ氏が住むニューヨークのトランプタワーの前は重装備の警察官が立つ。物々しいイメージは政権に就いた後も続くのか (c)朝日新聞社
Michael Green(マイケル・グリーン)/米戦略国際問題研究所上級副所長/1961年生まれ。G・W・ブッシュ政権時にホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長 (c)朝日新聞社
Michael Green(マイケル・グリーン)/米戦略国際問題研究所上級副所長/1961年生まれ。G・W・ブッシュ政権時にホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長 (c)朝日新聞社

 2017年の世界を予測してみた。2017年が幕を開けた。16年は、トランプ氏の大統領選勝利に代表されるように、世界中で既成概念や秩序が「反転」した年だった。今年はどうなるのか。トランプの外交について、米戦略国際問題研究所上級副所長のマイケル・グリーン氏に話を聞いた。

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 トランプ氏が米国の大統領になると、日米関係はどうなるのか。私は、トランプ政権が日本にとって非常に友好的な政権になる可能性が高いと考えています。

 大統領選挙中にみられた日本を攻撃する言動は、彼自身が抱く1980年代的な日本観、例えば日本が通商で不当に利益を得ている、などという日米貿易摩擦時代の対日感情的なものが背景にありますが、同時に世界中の民主主義が米国を「だましてきた」とする彼のごくごく一般的な物言いから出ているものでもあります。大統領に選出された今、米国の真の脅威に向かい合っていく中で、日本が最も頼れる親密国家の一つだということを、トランプ氏はすぐに認識することになるでしょう。

 在日米軍駐留経費の負担増を日本に求めていますが、日米同盟強化を外交政策の軸としている安倍晋三首相は、この問題にさほど難儀することなく対応してくるだろうと思っています。

 トランプ氏の閣僚人事を見ると、アジアの専門家として特筆されるべき顔ぶれはありませんが、国際主義者たちがいて、米国と各国との同盟を現場で導いてきた経験者たちがいます。米連邦議会や米国民は親日です。今後、米国の外交方針をめぐり、間違いなくあちこちで大きな議論や衝突があるでしょうが、日本に限って言えば、トランプ新政権にその存在を感謝されるパートナーの一つになるはずです。

●対中強硬策は一時的

 では米中関係はどうでしょうか。1年目は荒れるでしょう。台湾問題に関連して非常に厳しいメッセージを中国に送るという決定は、トランプ氏の政権移行チームの中枢から出てきました。また、トランプ氏の経済チームは、中国の鉄鋼製品が不当に安く販売されているとするダンピング(不当廉売)問題を始め、様々な商務事案をめぐって、中国に厳しい態度をとると思われます。

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