その後、13年に閣議決定した防衛大綱では、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や、軍事力を急速に強化し東シナ海や南シナ海で活動を活発化している中国の脅威を強調。島の奪還のための水陸機動団(日本版海兵隊、約3千人)の編成や、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部への部隊配備を明記した。これについて田岡さんは言う。

「これは愚策でね。離島防衛の決め手は制空・制海権。日本側に制空・制海権があれば、他国が離島へ侵攻することはないし、逆に、相手が制空・制海権を握っていた場合はこちらが奪還のために島に向かえば、海上で全滅する。また敵がまず攻撃するのは軍事目標。離島への部隊配備によって攻撃の対象にされ、戦場になるリスクが高まる」

 陸自の配備計画が進む石垣島では16年9月、石垣市議会が、自衛隊配備に関する推進決議を与党の賛成多数で初めて可決。一方、同年10月までに、配備予定地近くの4地区が反対決議を行い、「軍事的抑止力は近隣諸国との緊張を高める」として、市民団体が反対活動を展開している。

●研修名目で日米一体化

『八重山の戦争』(南山舎)などの著書がある大田静男さん(68)=石垣市=は言う。

「私たちは沖縄戦で『軍隊は住民を守らない』という教訓を学んだ。基地ができることで標的になり、島でドンパチやられたら私たちはこの小さな島でどこに逃げればいいのか。有事の際に自衛隊が守ってくれるなんて幻想でしかない」

 沖縄では自衛隊と米軍の一体化も進む。米軍施設・区域を使用した自衛隊の訓練や研修が頻繁に行われているのだ。共同使用については、日米地位協定2条4項aに基づくもので、現在、日米合同委員会で共同使用に合意しているのは10施設(八重岳通信所/キャンプ・シュワブ/キャンプ・ハンセン/嘉手納弾薬庫地区/キャンプ・コートニー/ホワイトビーチ地区/那覇港湾施設/陸軍貯油施設/出砂島射爆撃場/沖大東島射爆撃場)。「研修」名目ではそれ以外の施設でも行われている。

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