「君の名は。」の川村元気さん「皆が感じているのに言葉にしていないことにこだわる」

竹下郁子AERA

四月になれば彼女は
川村元気著
978-4163905532
amazonamazon.co.jp

 右肩上がりの時代なんてもう来ない、という話をよく聞く。本当にそうなのだろうか? 実は身近に、30年にも及ぶ「どん底」から抜け出して絶好調を迎えている業界がある。日本映画だ。2016年の日本映画界は、「君の名は。」「シン・ゴジラ」を筆頭にメガヒットが次々に生まれた。「なぜか」を取材してたどり着いたのは、小さな決断を積み重ねた末の5つの大きな決断。「AERA 2017年1月2日・9日合併号」では、その決断の一つ一つがどうなされたのかを徹底取材。ロケツーリズムや監督と俳優の人脈図など、「日本映画」を大特集。

 お金を集め、スタッフを選び、公開時期や方法を決め、宣伝にも責任を持つ。映画の究極の裏方。なかでも、ヒット作を連発するスーパープロデューサーの思考回路に迫ってみたい。映画プロデューサーであり、小説家でもある川村元気さんを取材した。

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 2016年の話題作「怒り」「何者」、社会現象になった「君の名は。」、これらすべてをプロデュースしたのが川村元気さん(37)だ。

「重要なのは時代の気分を感じていられるか。作品を通じて、皆が感じているのに言葉にしていない『集合的無意識』に訴えたいんです」

 その鍵を握るのが小説の執筆だ。自身3作目となる『四月になれば彼女は』は、愛することに煩わしさを感じる大人たちの「ラブレスなラブストーリー」だ。

●映画と小説で良い循環

 執筆のきっかけは、自分の周りに恋愛をしている人が少なくなったと感じたこと。恋愛することが前提の恋愛小説は時代にそぐわないのではないか、と疑問に思ったのが始まりだ。その後、男女100人に取材して疑問は確信に変わった。

「小説ではネット検索では出てこない、人の内面にある問題を描きます。それは集合的無意識を探す作業です。一人で小説を書く中で感じた時代の気分と、映画づくりで各分野の最先端のクリエーターに刺激を受けて感じたそれは、不思議と重なることが多い。執筆と製作それぞれで得たものを還元し合って深める、良い循環ができています」

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