韓国の政治の安定につながるのか…(※イメージ)
韓国の政治の安定につながるのか…(※イメージ)

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 朴槿恵(パククネ)大統領が「4月退陣」と弾劾訴追案採決の受け入れを表明しました。このコラム執筆時は弾劾議案の採決前ですが、その結果次第では即時退陣もあるでしょう。次期大統領選は短期勝負なら野党第1党の文在寅(ムンジェイン)氏が有利だと言われていますが、野党の足並みが揃わなかった場合、野党第2党の安哲秀(アンチョルス)氏も名乗りをあげるでしょう。保守派が推すのは、国連事務総長の潘基文(パンギムン)氏ですが、国連の任期の問題とセヌリ党からの出馬に難色を示す可能性もあります。さらには米国のバーニー・サンダース氏のようなダークホースが出現する可能性まであり、非常に混沌としています。

 現在の韓国には、縁故主義、属人主義、地域主義、激烈な競争と学歴偏重、財閥と政府との癒着などがはびこり、結果として若者を中心として社会全体に閉塞感が漂っています。それらに対する国民の怒りが、大統領府のスキャンダルで一挙に噴出した感じです。私はこれらの状況を「韓国病」と呼んでいるのですが、誰が大統領になるにせよ、外科手術的にこの構造的な宿痾にメスを入れなければなりません。

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姜尚中

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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