山陽小野田市立 山口東京理科大学/今春の一般入試の志願者が前年度の約3倍に急増した山口東京理科大学。2018年4月には薬学部も新設される計画だ
山陽小野田市立 山口東京理科大学/今春の一般入試の志願者が前年度の約3倍に急増した山口東京理科大学。2018年4月には薬学部も新設される計画だ

 大学が、世間と隔離された「象牙の塔」と言われたのはまさに「今は昔」。国からの補助金も削られ、若年人口も減少する中、自ら「稼ぐ」ことなしに生き残りを図れない傾向が強まっている。働く環境の悪化に苦しむ教職員。経営難の地方私大の中には「ウルトラC」の離れ業で大逆転を狙うところも出てきた。そんな大学の最新事情を12月19日号のAERAが「大学とカネ」という切り口で特集。例えば、経営難に苦しむ地方の私立大学が「公立化」で復活する例が各地で起きている。ただ、そのカラクリには危うさも潜む。

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 過去10年近く定員割れが続いていたのに、今春いきなり倍率が約8倍という「狭き門」になった大学がある。その名は、公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学。

 落語の「寿限無」とまでは言わないが、大学名の長さとしてはおそらく、日本一だろう。

 同大は1987年、旧小野田セメントなど地元経済界の要望を受けた山口県、小野田市(当時)、宇部市が、東京理科大学に働きかけて誘致した私立の「東京理科大学山口短期大学」が前身。95年に4年制の「山口東京理科大学」となり、今年4月、大学の設置者が、これまた合併で生まれた山陽小野田市に変更された。

 定員200人、工学部のみの単科大学だが、学生が思うように集まらず、短大時代から黒字の年はなし。学校法人内で埋め合わせしていた累積赤字は90億円近くに上っていた。

 そんな大学を突如、人気校に変えたマジックが「公立化」だ。

●半額になった授業料

 高倍率の入試を見事突破した1年生の男子学生は笑顔でこう話す。

「親には小さい頃から近くの国公立に行ってほしいと言われていました。地元では理工系だと山口大学だけでしたが、ここが公立化すると知って、第1志望にしました。親も喜んでいます」

 別の女子学生も満足げだ。

「規模が小さい分、先生との距離が近いのが魅力。なんでも相談できます。もともと私立だったので国公立より設備が整っているのもうれしいですね」

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