軍事評論家 田岡俊次さん/1941年生まれ。早稲田大学卒業後、朝日新聞社入社。防衛庁担当。米ジョージタウン大学戦略国際問題研究所主任研究員なども務めた (c)朝日新聞社
軍事評論家 田岡俊次さん/1941年生まれ。早稲田大学卒業後、朝日新聞社入社。防衛庁担当。米ジョージタウン大学戦略国際問題研究所主任研究員なども務めた (c)朝日新聞社

 中国、トランプ、北朝鮮、日本を取り巻く環境がきな臭くなっている。専守防衛に徹し、海外に展開できる装備は持たない自衛隊。安保法とトランプ大統領の誕生で、どう変わろうとしているのか。AERA 12月12日号では「自衛隊 コストと実力」を大特集。最新兵器から出世レース、ミリメシまでいまの自衛隊に密着している。

 米次期大統領が日米安保不要論を叫び、「積極的な武器使用」を認められた自衛隊が海外で活動する時代が来た。日本を守るのは誰なのか。自衛隊の実戦配備について、軍事評論家の田岡俊次さんに寄稿していただいた。

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 第2次世界大戦から71年。これは大坂城の陥落から元禄年間への歳月にほぼ匹敵する。2世代平和が続いたのは誠に結構なことながら、多くの自衛隊の高級幹部や防衛官僚も戦争を現実的に考えず、もっぱら組織の「自衛」と予算確保を目指すため、非合理な戦略、政策が生まれる。

 その一例は、「水陸機動団」だ。尖閣諸島などが中国に占領された際、上陸作戦による奪回を目的とし、約3千人の日本版海兵隊を2018年度に編成する方針で、MV22(オスプレイ)17機、AAV7水陸両用車52輛などを購入する。

 だが島の攻防戦では制空権(航空優勢)が決定的要素だ。敵の制空権下を島に向かう揚陸艦は空対艦ミサイルの標的となり、オスプレイも簡単に撃墜され、上陸部隊は全滅しかねない。仮に相手の航空機が一時的にいない隙を突いて接近、上陸に成功しても、後続部隊や補給を断たれれば、先に上陸した部隊は「玉砕」だ。逆に、こちらに制空権があれば、相手は上陸侵攻できないし、不意に上陸しても補給を切れば降伏する。

 東シナ海は中国にとり最重要の「台湾正面」というと驚く幹部が少なくない。そこを担当する「東部戦区」には新鋭機が優先的に配備されてきた。台湾空軍の戦闘機約410機に対抗し、中国空軍と海軍航空隊も東シナ海沿岸に約400機を配備し、うち240機以上は日本のF15Jなどに匹敵する「第4世代戦闘機」と見られる。

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