150万円までは控除を受けられる(アエラ2016年12月12日号より)
150万円までは控除を受けられる(アエラ2016年12月12日号より)
1120万円を超えると控除額を段階的に減らす(アエラ2016年12月12日号より)
1120万円を超えると控除額を段階的に減らす(アエラ2016年12月12日号より)

 政府・与党は控除を満額受けられる年収の上限を引き上げる方針を固めた。女性の就労拡大を促すというが……。

「女性が就業調整することを意識せずに、働くことができるようにするなど、多様な働き方に中立的な仕組みをつくる必要がある」──。

 9月に開かれた第1回政府税制調査会で、安倍晋三首相がそう言い出し、急遽、見直しが始まった「配偶者控除」。夫婦のどちらかが年収103万円以下の場合、世帯主の年収から38万円を差し引いて課税対象から外し、税負担を軽くする仕組み。パートで働く主婦が収入を103万円以下に抑えていることが、女性の就労拡大を阻むと問題視されてきた。

●家族手当の「壁」

 11月下旬、政府・与党は配偶者控除を撤廃するはずだったのを一転して、パート年収の上限を「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げる方針を固めた。“103万円の壁”をなくして女性の就労拡大を促したい首相の目論見が外れた格好になる。

 財務省の試算では、「150万円以下」で働くと、夫婦と子ども2人のパート世帯で、世帯主の年収が500万円なら住民税分も含めて年5万2千円、年収1千万円では年10万9千円の減税になる計算だ。「おトクになる、と手放しで喜ぶのは早計」というのは、ファイナンシャルプランナーの加藤梨里氏。

「壁を150万円に動かしたからといって、就労時間を大幅に増やす動きにはつながりません。むしろ、夫の会社から支給されている『家族手当』の対象から外れるほうが家計にとっては痛いので、結局は103万円以内で働こうとする女性が多い」

 家族手当は妻の年収が103万円未満などの場合、企業が夫の給料に上乗せして支給する手当のこと。家族手当が配偶者控除に連動して、150万円に引き上げられれば問題ないが、手当の廃止を検討する企業が増えている中、すぐに引き上げることは考えにくいという。

 厚生労働省「賃金事情等総合調査」(2015年)によると、8割超の大手企業が家族手当を支給している。月の平均額は妻1万7400円、第1子9800円、第2子9200円だ。仮に平均額通りの手当をもらっていたとすると、夫婦と子ども2人の4人家族で、月3万6400円が吹き飛ぶ。

 家族手当のほかにも、年収106万円から、社会保険の加入も義務付けられるので、働き損のダメージは大きい。こうした状況が解消されない限り、主婦の就労意欲はかきたてられない。

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