「朴槿恵は辞任」「朴槿恵は退陣しろ!」などと書かれたプラカードを掲げる集会の参加者ら。主催者や野党などによって配られ、会場や路上を埋め尽くした/11月26日、ソウル(朝日新聞ソウル支局・東岡 徹)
「朴槿恵は辞任」「朴槿恵は退陣しろ!」などと書かれたプラカードを掲げる集会の参加者ら。主催者や野党などによって配られ、会場や路上を埋め尽くした/11月26日、ソウル(朝日新聞ソウル支局・東岡 徹)

 去就を巡って混乱が続いた韓国の朴槿恵大統領が、ついに辞意を表明。事実上、次期大統領選レースがスタートした。隣国の次のリーダーは誰になるのか。

 韓国大統領府は建物の外観から「青瓦台」と呼ばれる。そこで11月29日、朴氏はこう切り出した。

「私の決心を明らかにしたいと思います」

 その決心とは「大統領職から退く」。1987年の民主化以降、任期途中で大統領が辞任した例はない。

 韓国の大統領は1期5年で、朴氏も2018年2月まで任期を残す。次期大統領選は来年12月に予定されていた。彼女の一大決心は前代未聞の大統領選レースの号砲だった。

●支持率、3位に浮上

 大統領選といえば、米国でトランプ氏が勝利したことが記憶に新しい。異例の大統領選を前にした国にも、「韓国のトランプ」と呼ばれる男がいる。

 最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)・城南市長(51)だ。

「朴槿恵は退陣後、必ず逮捕して、処罰しなければならない」

 李氏は11月20日、フェイスブックにこう書き込んだ。朴氏が検察に起訴された被告らの「共犯」と指摘されたことを受けた発言だった。

 朴政権が11月23日、野党の反対を押し切って、日本と防衛情報を共有する「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)を結ぶと、李氏は日本を「敵性国家」と断じ、朴氏を「売国奴」とこき下ろした。

 SNSで過激な言動を繰り返し、既存の政治家に飽き足らない層を引きつける。韓国の世論調査機関「リアルメーター」は、次期大統領選に立候補が有力視される人物の支持率を毎週公表している。李氏は11月第4週、初めて3位に躍り出た。12月1日に公表された11月第5週の支持率も15.1%で3位をキープした。

 ただ、与党関係者は「李在明なんて」と冷ややかだ。

 10月の失業率は3.4%だったが、若年層(15~29歳)に限ると8.5%に跳ね上がる。就職難に苦しむ大学生からは「ヘル(地獄)朝鮮」という言葉も出る。予測不能な北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)政権とどう向き合うのか。取り巻く環境は厳しさを増し、「ポピュリズム」だけでは歯が立たない。

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