実際に河瀬は、過去のイメージを覆すおもちゃで数々のヒットを生み出してきた。大人をターゲットに昭和の家電などのフィギュアを付けた「タイムスリップグリコ」は累計2500万個を売り上げた。ミニ絵本を付けたときは、「親子で楽しめる」と重宝された。同社が重んじる「創意工夫」の精神がそのまま、河瀬の強みになっている。

 とはいえ、反応がイマイチだったおもちゃも、やっぱり出る。でも、絶対にめげない。

「落ち込んでも日はまた昇る(笑)。なぜ失敗したのか突き詰めれば、見えるものがある。それを生かしてまたチャレンジしたい」

 関西大学を卒業し、92年に入社した。菓子開発企画部に配属され、「ビスコ」や「カプリコ」などさまざまな人気商品を担当。2015年、新設された現在の部署に移った。

 自らの子はもう中学2年と高校3年。小さな子どもたちの好みをキャッチするため、菓子店やおもちゃ売り場、公園へ足しげく通う。

「『グリコ』は社の原点。絶対になくすことはできない。これからもお子様の心と体の栄養になるよう、将来につないでいきます」

 歴史を重ねたその小箱に、今も思いを詰め込んでいる。(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(ライター・安楽由紀子)

AERA 2016年8月29日号