開発担当の加工食品事業部第三部開発グループの中井朋恵さん(27)は、味のレベルや茹で加減を工場の量産用に落とし込むのが難しかったと振り返る。

「研究所で試作したものを工場スケールで製造すると、思ってもいないようなものが出来上がったこともありました」

 茹でたペンネが水分を吸ってしまわないよう、できるだけ早くソースと合わせることや、均一に混ざるような製造工程にしたり、冷凍パスタに適したソースの配合設計を行ったりした。

 濃厚ソースに負けず、粉っぽくならない美味しいペンネのサイズにこだわったと加工食品事業部第三部営業グループリーダーの尾迫浩伸さん(39)は言う。

 ターゲットは絞らず、幅広い消費者需要を狙うのは山崎製パンのランチパックだ。毎月4、5品の新商品を出している。2月発売に向けての試作品には、マラソンシーズンにかけてエナジードリンク風味のジャムを作成。「しかし、酸っぱすぎてボツになりました」と話すのは営業統括本部マーケティング部マーケティング第二課課長の鈴木智さん(39)だ。現在は60品ほどの味展開をしている中、17年1月に「キャベツメンチカツ」など6品を新たに投入する予定だ。今回、予選落ちした中には「から揚げ」があった。

「もも肉などゴロゴロしているものはパンが圧着しなかったり、逆に柔らかすぎると外にしみだしてしまったりするので、バランスが大切です」(鈴木さん)

●「マジパン」に挑戦

 会社名と商品名が同じチロルチョコは斬新な味展開が特徴だ。美味しさと驚きが含まれた「チロルらしさ」の概念を社内全体で共有している。マーケティングはせず、それぞれが食べてみたい味を提案し、まずは形にしていくスタイルをとる。
 開発部開発室リーダー・河口幸誠(こうせい)さん(34)が現在試作中の「ブラックオレンジ」には68%のハイカカオに、オレンジソースとマシュマロが入っている。作り方は、型に入ったチョコにソースを入れ、そのソースを囲むようにチョコを搾る。これは、通称「ちょこっと充填」と言い、次に入れるマシュマロが浮いてこないよう糊の役割を果たしているのだ。ビスケットやグミのように自重がない具材用に工夫を施している。最後に再びチョコを入れ、冷やして完成となる。

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