いまも精力的に公務をこなされる天皇、皇后両陛下(11月21日、東京・上野の日本学士院会館) (c)朝日新聞社
いまも精力的に公務をこなされる天皇、皇后両陛下(11月21日、東京・上野の日本学士院会館) (c)朝日新聞社
首相官邸で開かれている有識者会議。まもなく有識者のヒアリングが終わる(11月7日) (c)朝日新聞社
首相官邸で開かれている有識者会議。まもなく有識者のヒアリングが終わる(11月7日) (c)朝日新聞社
有識者会議、専門家の退位と特措法への賛否(2016年12月5日号より)
有識者会議、専門家の退位と特措法への賛否(2016年12月5日号より)

 天皇陛下の生前退位への雲行きがあやしい。来年特措法を成立させ、2018年に退位との見通しもあるが、有識者会議の議論が深まらない。

 天皇の生前退位などを議論する「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が、大詰めを迎えている。専門家からのヒアリングで、対象者16人のうち11人から意見を聞いた。退位に賛成する専門家は11人中4人、「どちらとも言えない」は1人、一代限りで退位を認める特別措置法を容認する専門家は1人、条件付き容認2人に留まる。賛否だけで見れば、生前退位の実現に暗雲が漂う途中経過だ。

 もっとも会議の結論は、多数決では決まらないという。9月18日、安倍晋三首相は、有識者会議について「期限ありきではなく、静かにまずはさまざまな方々からお話をうかがいたい」と答えた。年明けにはこのヒアリング結果を受けて、有識者会議が論点整理を公表。それを国会に伝え、与野党で協議を開始する見通しだ。

 皇室制度に詳しい静岡福祉大学教授の小田部雄次氏は、専門家の構成に首をかしげる。

「退位や特措法の是非については、誰がどう答えるか想定済みのはずです。多数決ではないと言いますが、世論を顧みず、退位自体に否定的な意見を持つ人を多く入れている点は、疑問が残ります」

●ヒアリング外れて困惑

 政府の有識者会議は、有識者からまんべんなく意見を聞いたという「ガス抜き」装置との指摘もある。政府主導の会議であるがゆえ、メンバーの人選や議論のテーマに政治的な思惑も見え隠れする。

 ある学者は、本誌の取材に、自身も「有識者会議のヒアリング対象候補だった」と明らかにした。

「事前にアプローチがあり、七つのヒアリング項目についての答えも準備していました。質問自体に偏りは感じましたが、私なりの考えを申し述べるつもりでした」

 ところが、10月27日の有識者会議の2回目会合後、「メンバーから外れた」との連絡が入った。理由を尋ねると、「右から左まで参加者のバランスを取るため」と説明された。この学者は当初、ヒアリング対象の専門家は「20人」と聞いていたというから、4人ほどがバランスを取って「外れた」ことになる。

「本当に政府はやる気があるのか」と疑問視するのは、23年間にわたり宮内庁に勤務し、現在はBSジャパン「皇室の窓」の監修などを務める皇室ジャーナリスト・山下晋司氏だ。

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