また、政策面で力を持つ首席戦略官・上級顧問に、右翼扇動者との悪評がある反主流派メディア幹部のスティーブン・バノン氏を選ぶなど、トランプ氏の予測不能な行動は相変わらずだ。それだけに真意を見極めようと各国も必死になっている。

 ロシアのプーチン大統領は、冷え込む対米関係のV字回復のため、相思相愛とされるトランプ氏にラブコールを送り続ける。欧州各国では来年までに、オーストリアやフランスで大統領選、オランダやドイツで総選挙があるが、いずれも反移民などを掲げる政党がトランプ氏との連携を模索する。EU離脱を決めた英国はEU外での米英二国間外交に既にシフトしている。

 選挙中に批判のやり玉に挙げられたアジア各国はトランプ氏との人脈構築に特に躍起だ。名指しで敵視された中国、政治混乱を極める韓国が直ちに動けないなか、安倍晋三首相は17日夕(日本時間18日朝)、大統領選後初の外国首脳として会談した。10日の電話協議時に自ら約束をとりつけた会談はトランプ・タワーで90分間、少人数で実施。日米同盟や自由貿易の重要性を訴えたという安倍首相は会談後、その様子をSNSに書き込んだ。

「じっくりと、胸襟を開いて、率直な話ができた(略)共に信頼関係を築いていくことができる、そう確信の持てる会談でありました」

 官邸筋は「(トランプ氏が)現実的な政策をとる可能性は十分ある」と期待する。ただ、そうでない場合の安倍首相の決意はこうだという。「米国が世界の牽引(けんいん)役をやめるなら日本が世界を引っ張ればいい」

(編集部・山本大輔)

AERA 2016年11月28日号