プロ野球日本シリーズ第3戦。10回裏2死二塁、サヨナラの右前適時打を放ち、チームメートに祝福される大谷(撮影/写真部・松永卓也)
プロ野球日本シリーズ第3戦。10回裏2死二塁、サヨナラの右前適時打を放ち、チームメートに祝福される大谷(撮影/写真部・松永卓也)

 日本ハムに入団して4年目。大谷は高校時代からメジャーリーグ挑戦を夢見ていた。

 2016年の日本シリーズは、本拠地・札幌ドームで3連勝した北海道日本ハムが、日本一に王手をかけた。本稿締め切り時点(10月28日)で、その行方は決まっていないものの、先にセ・リーグ王者・広島に2勝を許すという悪い流れを一変させたのは、第3戦の延長10回裏にサヨナラ安打を放った大谷翔平であろう。

 今季も二刀流を続けた大谷は、投げては10勝(4敗)を挙げ、打っては打率3割2分2厘、22本塁打の成績を残した。クライマックスシリーズのソフトバンク戦では、DHで出場しながら、9回にリリーフ登板し、日本記録となる165キロを樹立した。

●すごい場所がメジャー

 先発投手としては規定投球回数に、打者としても規定打席に達していないが、パ・リーグ制覇の立役者であるのは誰もが認めるところであり、シーズンMVP級の働きを見せた。

 入団当初、プロ野球界の多くの重鎮や識者が、「二刀流」挑戦に懐疑の目を向けたが、そういった声は今、聞こえてこない。

 12年10月、花巻東(岩手)の3年生だった大谷は、一度はドラフト指名を拒否して、メジャーリーグに挑戦することを表明した。次の大谷の言葉は、米国挑戦を表明する直前に聞いたものだ。

「僕は(社会人・新日本石油ENEOSからドラフトを拒否してアメリカに渡った)田澤純一選手(レッドソックス)にも注目していました。社会人からアメリカに挑戦するってすごい話題にもなりましたし、日本球界で衝撃的な出来事だった。ピッチャーなら誰でも目指す、すごい場所がメジャーだと思う。自分もそういう人たちと一緒にやりたいと、ずっと小さな頃から思っていたんです」

●「夢への道しるべ」

 しかし、ドラフト上位指名を受けるような注目高校生が、指名を拒否して米国へ渡り、メジャーリーグで成功を収めた例はない。大谷の言葉にはパイオニアとして海を渡り、成功したいという強い意志が感じられた。

 直後、大谷は会見を開く。

次のページ