しかし、Spookは検索スピードが速いので、「温泉」からいきなり全国のホテルや宿にたどり着くことが可能だ。ユーザーは、念頭になかった「沖縄の温泉」や旅行プランと出合えるようになった。

 現在、国内大手旅行会社の8割以上のサイトにはフォルシアの検索エンジンSpookが導入されている。

 同社のこうした成果は、顧客との打ち合わせにエンジニアを必ず同席させる、という地道な取り組みから生まれたものだ。エンジニアにはいわゆる「オタク」タイプや、職人肌で無口なタイプが多く、お世辞にもコミュニケーション力があるとはいえない。過去には「そんなの無理です」と、つっけんどんに言い放ったエンジニアもいて、屋代さんも、

「外に出すのは、正直、リスクでもあった」

 と苦笑い。それでも同席させ続けることで、彼らはコミュニケーション力の不足を技術力と自分なりの表現力で補い、「こんなことができたら」「あれに困っている」という顧客の会話に潜むビジネスチャンスに気づくようになったという。

「技術とコミュニケーション力を併せ持てば、顧客の想像をはるかに超える夢のような仕事ができる。社会に新たな価値を提供することができるのはそんなエンジニアです」(屋代さん)

(編集部・深澤友紀)

AERA 2016年10月31日号