私がプログラミングを始めたのは、25歳のときです。「ラクスル」というオンライン印刷サービスの立ち上げにかかわりました。自分たちでプログラムを書いてサービスをつくったのですが、例えばカートの決済機能も、商品をカートに入れて、配送先を入力して、決済方法を選んで、というメインのストーリーだけでなく、クーポンを使えるようにしよう、ポイントを使えるようにしよう、と追加のパターンを考える必要があります。結果、いろいろシミュレーションしつつ、何を受けて何を実行するか、という条件分岐を意識して考えるようになりました。

●どんな職業でも必要

 コードを書いて自分の考えたことを形にすれば、あとはコンピューターが24時間嫌がらずにやってくれる。自分の分身が増えたような、強力な武器を身につけたような感覚がありました。

 昨年、「みんなのコード」という団体を立ち上げました。「公教育でのプログラミング必修化の推進」をミッションに掲げ、有識者会議での提言や、学校の先生への研修、普及活動を行っています。

 事業を運営するなかで、契約書を読んだり作成したりすることも多いのですが、私の場合、契約書や法律といったものに対しても、人より抵抗が少ないかもしれません。「かつ」とか「および」などの言葉を使って、解釈のズレがないように記述されている。プログラミングと似ている、と感じます。

 10年先、20年先には、社会とITの関係、そして仕事のあり方はさらに変わっていきます。

 いまの義務教育での情報教育は、オフィスソフトの使い方やリテラシーなど、コンピューターの外側の話が中心です。プログラミング教育によって、コンピューターを内側から理解できるようになる。内側がわかれば、何が起きているのかわからないブラックボックスとして他人まかせにすることもなくなります。

 正しくコンピューターと向き合い、自分で解決策を探る能力は、どんな職業に就くとしても、必要だと思っています。(編集部・高橋有紀)

AERA 2016年10月31日号