19日の討論会で。前回の討論会で、クリントン氏の背後に付きまとい、「自分が大統領になったら、投獄する」と脅迫したのもセクハラと批判されている=10月19日(現地時間)、米ネバダ州(写真:gettyimages)
19日の討論会で。前回の討論会で、クリントン氏の背後に付きまとい、「自分が大統領になったら、投獄する」と脅迫したのもセクハラと批判されている=10月19日(現地時間)、米ネバダ州(写真:gettyimages)

 不動産王、テレビ番組の司会として、女性にセクハラを繰り返してきた。見過ごすことは、世界の女性に対する攻撃と同義だが、“犯人”は、世界最強国の大統領候補だ。

「なんて、やな女だ」

 米大統領選のドナルド・トランプ共和党候補が、赤い顔をしてつぶやいた。10月19日夜、全世界にテレビ、オンラインで中継される最も重要な大統領候補討論会で、だ。

 自身の発言中だった民主党候補のヒラリー・クリントン氏は、顔色一つ変えず、主張を最後まで言いきった。

 トランプ氏の女性に関する問題発言は、事欠かない。

「美人にはすぐにキスをするんだ。(中略)スターになれば、(女性は)何でもさせてくれる。性器をつかんだりさ」

●タコのような手で“暴行”

 米紙ワシントン・ポストが10月上旬にスクープした音声ビデオに記録されていたトランプ氏の発言だ。彼は、この会話で、既婚女性に性的関係を迫り、暴行に及んだこともにおわせたが、後に否定した。

「彼は、タコのようでした。彼の手が私の全身を覆っていました。あれは、“暴行”でした」

 音声ビデオが公開された直後、ジェシカ・リーズさん(74)が、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、30年以上前、搭乗便のファーストクラスでトランプ氏の隣に偶然座った時の話を明らかにした。彼女は、トランプ氏が服の上から胸をつかみ、スカートの中に手を入れようとしたとしている。このほかに、大衆誌「ピープル」の女性記者が取材の際、突然キスされたことを公にした。

 トランプ氏が「同意なしに」体を触った、あるいはキスしたと証言した女性が、10月20日までに10人にも上る。「スターなら女性は何でもさせてくれる」とトランプ氏が自慢したというワシントン・ポストの記事を裏付ける証言だ。

 しかし、トランプ氏は、すべての証言を「嘘だ」と批判。さらに「自分が(好きで)ピックアップするタイプではない」と、証言した女性らの容姿を非難した。19日の討論会では、「ヒラリーの陣営が考えたことだと思う」と、あたかもクリントン陣営が、女性らに嘘の告発をさせたかのような発言をした。

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