「合コンで、女性陣の対応が早大生に対して雑だった。慶大生にはサークルやゼミの話を、目を輝かせながら聞いていた」(早大現役・政経・男性)という恨み節も。

 もちろん、慶應にも庶民や苦学生はいる。お金持ち、遊び人とのイメージに、居心地の悪さを覚えた卒業生も少なくない。

「贅沢しているように勘違いされた」(慶大85年卒・法・男性)

「同性からいらぬ嫉妬を受けることが多かった。金持ちと思われ、おごらされることも」(慶大88年卒・文・男性)

 社会に出ると、男女ともに「財界に顔がきく」「世渡り上手」といった意見が寄せられた。

「就活イベントでしゃしゃってくる黒縁眼鏡男子は慶應経済」(早大・法・女性)

 という指摘も、就活重視の実利主義ゆえか。

 早慶戦、とりわけ六大学野球のそれは、両校が火花を散らす象徴的な場だ。呼び方一つにも、両者の意識があらわれる。早大卒業生が、「慶早戦と呼ぶところが慶應」と突っかかれば、「早慶戦っていわれるとモヤモヤする」と慶應卒業生が返す。早稲田が、「神宮球場のスタンドには、圧倒的に早稲田が多い。慶應は冷淡」といえば、慶應は「応援中、現役生と卒業生の間に一体感が生まれる」と応じる。

●実は仲良し?

 アンケート結果によると、愛校心は、「大いにある」「多少はある」が早大で約95%、慶大で約93%を占めたが、相手校へのライバル心は、「大いにある」「多少はある」が早大で約74%、慶大では約49%に留まっている。慶大側は「意識していないよ」と言わんばかりだが……。

 慶大法学部の現役生で慶應塾生新聞会代表の小林良輔さん(21)は、「サークル同士のつながりがあって、早慶は実は仲がいい。切磋琢磨する関係かな。対抗意識をつくりだして、楽しんでいるきらいがある」という。

 慶大85年法学部卒のEさんは、学生時代の体験談をこう明かす。

「早慶戦後、仲間と銀座に繰り出し『若き血』を歌いながら歩いていたら、黒塗りの高級車が通りかかり、窓から老紳士が顔を出したんです。勝敗を問われ、『勝ちました!』と答えると、1万円札を差し出し、『これで祝杯をあげてくれ』と言い残して去っていきました」

 慶大03年文学部卒の女性は、笑みを含んでこう言った。

「雑誌で早慶のランキングがあれば、ウチが上かを確認します。どんな試合も、10年負け続けも10年勝ちっぱなしも、最高につまらない。早稲田にはいつまでも好敵手であってほしい」

(編集部・澤志保)

AERA 2016年10月17日増大号