背筋が伸びていても、疲れのせいかアゴを上げながら走っているランナーも見受けられる。だが、これは逆効果だ。

「アゴが上がると、重心が背中側に傾くので、推進力も失われて、より苦しくなる。多少ツラくてもアゴは、気道をふさがない程度に前に突き出すほうがいい」

 正しいフォームで30分間、楽にジョギングできるようになったら、距離とタイムを意識したランニングに励んでみたい。

<STEP3 ランニング&レース>

「ジョギングを始めたけれど、三日坊主で終わった」という人は少なくないはずだ。継続できるか否かが、初心者ランナーと市民ランナーの分岐点なのだ。

 では、いかにして継続するか? その一つの方策はこれまでに明らかにしてきた正しいフォームを身につけること。さらに、明確な目標設定を行えば、継続するモチベーションが高まるのは間違いない。

「どんな初心者でも、半年もトレーニングすれば10キロのレースを80~90分の制限時間内に完走できるようになる。ハーフマラソンも、1年もトレーニングすれば完走できる。週に3日走り続ければ、1、2カ月で目に見えて身体も変わってくる」

 金氏がお勧めするのは、半年後のレースに申し込んでしまう方法。初心者はまず10キロのレースを選択してみよう。

「レースは独特の緊張感があって、普段のトレーニングにはない応援もある。その達成感は格別です。当然、順位もタイムも出るから、『次はもっと上位に』という意識も生まれる」

 ハーフを完走したら、フルマラソン、さらにフルマラソンのサブ5(5時間切り)、サブ4(4時間切り)と、自然と次の目標が浮かび上がってくるはずだ。そのとき、あなたの身体は、当初とまったく異なる健康かつ強靱な肉体へと生まれ変わっていることだけは保証しておきたい。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2016年10月17日増大号