現行民法のもとでも、二次相続では一次相続と比べて、税額が大きくなる傾向がある。一次では、配偶者の税額軽減があり、小規模宅地等の特例も使えることが多いが、二次では、使えないケースが多い。また、二次では法定相続人が1人減るので、基礎控除額が600万円減り、かつ、適用される税率も高くなる可能性がある。

 ちなみに、「配偶者の税額軽減」とは、配偶者が相続する財産が1億6千万円以下、もしくは、法定相続分までなら相続税がかからない制度。「小規模宅地等の特例」とは、生計を共にする親族などの条件を満たせば330平方メートルまで、土地評価額が最大8割減額される制度だ。

●配偶者の居住権も議論

 配偶者の法定相続分が2分の1から3分の2に引き上げられた場合、法定相続分どおりに相続すると、一次と二次の相続税総額はどう変わるのか。

 内田氏にシミュレーションしてもらった。夫と妻に子ども2人という4人家族で、夫が4億円の財産を残して亡くなったというケースだ。

 一次相続の段階では現在の「1/2」のほうが、改定後の「2/3」よりも相続税額が高い。しかし、二次相続になると「2/3」のほうが高くなっている。そして、一次と二次の総額でも「2/3」のほうが963万円も高い。法定相続分どおりに分けると“損をする”ということだ。

 内田氏は「民法の法定相続分がどうであろうと、そもそも、遺言により、または相続人全員が合意すれば、どのような分け方をしてもいい。相続税のことも考えて、遺言や遺産分割の内容を決めたほうがいい」。

 また、亡くなった夫が遺言で自宅を第三者に贈与しても、妻が住み続けられる「居住権」も議論されている。日本では、相続財産の中で不動産の占める割合が大きい。

 それゆえ、不動産をどう分けるかが問題になるケースが少なくない。遺言がない場合はとくに、不動産を売却して現金にしてから分けることもある。遺産分割によって高齢の配偶者が住み慣れた家から急に退去することを求められる事態も起きてしまう。

 ただ、居住権新設には課題もある。村上氏はこう話す。

「居住権を短期と長期に分けて、1年程度の短期は問題ない。長期だと数十年になる可能性もあるが、相続人がその土地を抵当にしてお金を借りている場合などは権利の調整が難しい」

 相続法制改正について、法務省は7~9月にパブリックコメント(意見公募)を実施した。これを受けて、10月から法制審議会の議論が再開する。(ジャーナリスト・横山渉)

AERA 2016年10月17日増大号