10人の医師に加え、病院の幹部・医事課の承認、休日出勤のシフト繰り、外部の医師や看護師の協力など、全体を指揮。3カ月で333人が受診し感染拡大を食い止めることができた。

「地味な仕事に聞こえるかもしれませんが、こういう下支えをしっかりやることが、日本全体を感染症から守ることにつながるのだと思います」

 啓発も必要だ。

 分別があるはずの19歳の男性が、症状が現れているにもかかわらず不特定多数の人と接触するコンサートに行ったということ自体、日本人の感染症リテラシーの低さを露呈している。竹下さんは個人で講演を行うほか、冒頭のようにフェイスブックなどのSNSを通じて、積極的に発信もする。

●「もしも」への備えを

 竹下さんたちの報告が、国内発症の1例目となるケースも少なくない。いたずらに不安をあおらないよう、外に出す情報とタイミングは必ずチームで検討する。毎朝15分間のミーティングをはじめ、注意喚起のアイデアをメーリングリストで共有もしている。

「どれだけ『もしも』に備えられるか。チームメンバーから提案された対策プランのすべてを実行に移せるわけではないのですが、今後も続けていきます」

(編集部・竹下郁子)

AERA 2016年10月10日号