こうした事故により、医療・介護の現場では誤飲の危険性はよく知られるようになった。都内の40代看護師は話す。

「高齢者やアルコール中毒患者などが、間違って飲む可能性があるため管理に気をつけています」

 ただし、今回のように故意に注入されたとしたら──。そのような想定がないため、界面活性剤をどれくらい体内に取り込むと死に至るかという明確なデータはない。日本界面活性剤工業会に問い合わせてもこうだ。

「血管に注射した場合、致死量がどのくらいかというのは……。普段から薬剤に慣れ親しんでいる私たちでもわからない」

 となると、今回の殺意ははたしてどれほどだったのか。先の看護師はこう話す。

「すべての薬は使い方を間違えると致死性がある。医療現場では、基本的にすべての薬は危険だと分かったうえで使っています。しかも点滴に入れる薬剤ではないわけですから、相当な悪意があっただろうと感じますね」

(編集部・山口亮子)

AERA  2016年10月10日号