●「復職支援の動き」も

 離職した女性医師は、仮に復職したとしてもフルタイムで働くことは難しく、健康診断や産業医などのパートタイムで勤務することが多い。だが、東京女子医科大学教授で皮膚科医の檜垣祐子さんは、パートタイムでは医師としての専門的なスキルは上がらないと話す。

 医師不足で、地方を中心に中核病院の小児科などで診療を休止するところが相次ぐ昨今、医師の世界の「10年遅れ」を許し女性医師の離職を放置することは、社会にとって不利益しかない。女性医師の復職を支援する動きも、わずかながら出始めた。

 出産と育児で離職した40代の女性産婦人科医は、末子が小学生になったのを機に復職を決意した。ブランクは10年。まず訪ねたのが、前出の檜垣さんがセンター長を務める東京女子医大女性医師再教育センター。復職を希望する女性医師からの相談を受け、関連病院での3カ月間の研修などで復職を支援している。ネットなどを通じてここを知り、相談に来る人の8割以上は、同大以外の出身者だ。

「いったん現場を離れると心理的ハードルが上がり、実際には常勤で復職できるだけのスキルや時間があったとしても、できないと思い込んで悩んでいる人が少なくありません」
 と、檜垣さん。相談者の希望する診療科の医師など、相談者に合ったスタッフが面談し、現実に即したアドバイスをしたり、復職への道のりを一緒に考えたりする。これまでに222人の女性医師から相談があり、その約4割が研修を受けた。

 医師の世界でも、働き方改革が必要だ。(編集部・長倉克枝)

■女性勤務医たちの胸中は…

子育て中の勤務形態に選択肢がほとんどない。出産するとキャリアを中断せざるを得ない(30代・愛知県/皮膚科)

一般の仕事よりは、帰宅時間が遅くなる職業なので、女性は特に体力面で悩むことはあると思います(30代・東京都/精神科)

女性医師と男性医師との間にかなりの格差が存在します。女性医師の方がワーク・ライフ・バランスが多様なので、よい面も悪い面もあると思います(40代・奈良県/小児科)

自分や家族の時間よりも仕事を優先することが当たり前に求められます(30代・愛知県/リウマチ科、膠原病科、呼吸器内科)

女性は産後も医師免許があるというだけでバイト生活もできるので、「バリバリ」から「ゆるく」まで自由に働くことができます(30代・愛知県/小児科、代謝・内分泌科)

※AERA 2016年10月3日号「現役医師545人アンケート」から。引用したコメントはすべて女性の勤務医のもの

AERA 2016年10月3日号